hitomi's poetry
想い出綴り−52 惜春賦

cici
 老境に入るにしたがい、若き日々を懐古する。
 あれもしたい、これもしたいと夢と希望に胸を膨らませていた独身時代。
 この頃は好きな車のローンを払う為に働いたもので、車が手に入るとあちこち走り回った。
 2、3日ぐらいは寝なくても平気で、朝まで遊んでからそのまま仕事をした事もあった。
 ドライブの他、友と飲みに行ったり釣りをしたり海水浴に行ったり山登りをしたりとエネルギッシュに行動。
 満天の星空の下でメラメラと燃え上がる炎の周りで、仲間と語り合い歌を唄ったキャンプファイヤーは印象深い。
 語りつくせないほどの楽しい経験が盛り沢山の青春のメモリー。
 妻をめとった時には嬉しさと同時に、「一人前の男になれた」と自覚した。
 そして娘を授かり初めて抱いた時には命の重みを感じ、「父として家族を守る!」と責任感が芽生えた。
 家族を食べさせていく為に必死になって仕事をした。
 その中で、フランチャイズ契約をした本社の倒産のあおりで、多額の借金を抱えた事もあった。
 何度も仕事に行き詰まり、廃業、転職、独立開業を繰り返し、借金を返す為に寝る間も惜しんで働いた。
 家庭を振り向きもせずにガムシャラだったので、前妻に去られた事もあった。
 あの頃は辛く苦しかったが、今、振り返ると「いい経験をした」と良い思い出になる。
 ただ、離婚で瞳と妹の悠を離れ離れにさせて二人に寂しい思いをさせたことと、瞳を亡くしたこと以外は…。

※惜春(セキシュン)=行く春を惜しむこと。また、過ぎ行く青春を 惜しむこと。
※老境(ロウキョウ)=老人の境遇、境地、老年。


作文・TOPへ戻る

●back

●composition-top

●top-page

●next

>L>