●東野圭吾『手紙』


 東野圭吾さんの訃報に接し、大きな喪失感を覚えた。私は普段ほとんど本を読まないが、テレビドラマや映画が好きで、東野作品は映像を通して数多く楽しませてもらった。
 どの作品も人間の心の奥深くを描いた名作ばかりだが、中でも最も心に残っているのが、山田孝之さん、玉山鉄二さん、沢尻エリカさんらが出演した映画『手紙』である。
 主人公は、自分のために罪を犯して服役する兄を理解したいと願いながらも、「犯罪者の弟」という世間の目に苦しみ、進学や就職、恋愛まで理不尽な差別を受ける。そして、生きていくために兄との距離を少しずつ置かざるを得なくなる。
 その葛藤はあまりにも切なく、胸が締めつけられた。被害者遺族に許しを請う場面、そしてラストの刑務所の慰問で同級生と漫才を披露。そこには兄がいた。漫才のネタで兄への愛を語る。泣き崩れる兄。この場面で、涙があふれて止まらなかった。
 加害者、被害者、その家族、そして周囲の人々。それぞれが抱える苦しみや葛藤を真正面から描き、人はどう向き合い、どう生きていくべきかを深く考えさせてくれた作品だった。
 また、出演者一人ひとりの迫真の演技も見事で、物語の感動をさらに大きなものにしていた。
 数え切れないほどの名作と感動を私たちに届けてくださった東野圭吾さん。心から感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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