hitomi's poem

hitomiの part32(三十路の墓参)


 

昨日、誕生日を迎えた娘の墓参りに行った。
もし生きていたら9月13日で30歳になる。
娘がこの世に生を受けた祝福すべき日なのに、
まさかこんな形で迎えようとは夢にも思わなかった。

30歳、世間ではいい年頃の娘、お嫁にいっていたかも…
場合によっては、私は孫を抱けたかも…
いや、目指していたダンスの道に進んでいたかも…
ああ、生きている時にもっと手を差し伸べていたら…
不憫(フビン)な娘への様々な思いが脳裏を駆け巡る。

私は仕事にかまけて構ってやれなかった。
お詫びの言葉を探して娘を思えば目が潤む。
涙がこぼれ落ちないように空を見上げれば、
遠く離れて届かぬ思いに、今日もまた胸を焦がす。

墓前に花をたむけ、ロウソクの代わりに線香を30本立てた。
1本1本、1歳から25歳までの思い出をこめて火をつけた。
空間に娘の誕生から死去までの出来事が走馬灯のように甦る。
残りの5本、私はイメージを膨らませながら火をつけた。
そして細々と揺れる煙に手を合わせ「誕生日おめでとう」と唱えた。

一句:二十五で 止まった娘も 三十路なる


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hitomiの part33 (夢〜DREAM〜)

「私の夢はダンスを極めて有名なダンサーになることや」
そして、その世界で憧れられる人になりたいと云っていた
そして、歌が大好きで大きな舞台で唄ってみたいと云っていた
その娘が志し半ばの25歳の夏、病いと闘いながらもこの世を去った
その無念さを思うと、いたたまれない悲しさで胸が締めつけられた
親として娘を助けられなかった無力さを、悔んでは唇をかみしめ涙した
赤い表紙のアルバムを開いて、娘の写真を見ては幾度となく涙をこぼした
とめどなく流した涙はやがて天へと続く河となり、娘の住む星空へと導いた
そして私は無我愛に目覚め、娘の為には泣いてばかりいられないと気がづいた

「そうや、娘の夢をお父さんが叶えてあげよう」

娘の夢の途中を引き継いだ私は、頑張って地元ののど自慢に優勝した
NHKホールのグランドチャンピオン大会で、娘の写真を胸に唄いました
そう、大舞台で唄いたいと言っていた娘と一緒に唄ったのです
私は今、もう一つの娘の夢を叶えようと、次なるステップを目指している
ふと思いめぐらせば、娘の夢は私が若い頃に描いていた夢に近かった
娘の夢を叶えることは、自分の夢を叶えることでもあったのだ
世間の荒波に呑まれ、いつしか泡沫の如く消え去った私の夢
それを叶える為に、天国から娘は私の背中を押してくれている…

※慕嬢詩(ボジョウシ)=娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
※無我愛(ムガアイ)=我欲のない真の愛情。
※泡沫(ウタカタ)=水面に浮かぶあわ。

一句:夢のため 親が亡き娘(コ)に 導かれ
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