hitomi's poem

hitomiの詩 part65 星のない空



長かった妻の闘病がいよいよ終ろうとする時に、敬愛する義父が亡くなった。
妻はずっと悲しみに暮れ、治りかけた病(ヤマイ)が後戻りしないか心配だ。
私もまた、長引く不況で店が思うようにいかず気が滅入(メイ)っている。
終業後の帰り際、ふと見上げた空は真っ暗闇、今夜の空に星がない。
停電した部屋のようで、光を失くして足元が見えず、つまずきそうだ。
私はいつも夜空を見ると、どの星に瞳がいるのかな、と思い浮かべる。
しかし、こんな気持ちで夜空に瞳を探しても、そこに君は見つけられない。
ああ、心が折れそうになる。空き缶を握り潰すようにギュッと胸を締め付ける。
妻には見せられない男の辛さや弱さ、一人で悩みを抱え込む。
淋しくて私はそっと瞳の名を呼ぶが、星のない空は沈黙したまま。
娘に先立たれた私の人生は、悲しみと共に生きてゆかなければならない。
でも、この辛さ悲しさは、自分自身が生き甲斐を見つけて鎮(シズ)めるしかない。
今はいない瞳を慕いながら、暗雲に包まれた星のない空を見続けた。



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