●慕嬢詩『図書館』

私は以前、店の企画でミニコミ誌を発行していた。当店の目玉である「カラオケ番付表」をはじめ、「トピック」「地域の情報」「クイズ」、今では個人情報保護法に抵触する「今月誕生日の人」の紹介など、毎号さまざまな記事を掲載していた。
そして堺市に関わる歴史や伝統産業、老舗の店、名産・特産、観光、祭りや行事、人物伝、名所などのネタ探しに、よく図書館へ足を運んだものだ。
本がいっぱい並んだ図書館は、私にとって知の宝庫。背表紙を眺めているだけでも心がときめく。一人で出掛けることもあったが、時には妻と娘を連れて行った。
幼い娘は本棚の間をあちこち歩き回り、気に入った絵本を自分で選ぶ。ぬいぐるみや動物が登場する話、お姫さまや魔法、妖精が出てくる空想の世界。そんな本を手に取ると、妻の隣に座り、夢中になってページをめくる。その小さな背中を眺めているだけで、こちらまで幸せな気持ちになった。
一方の私は、興味を引くネタや地域の情報を集めたり、新聞コーナーで各紙に目を通したり。同じ出来事でも、見出しや論調が違うことがあり、読み比べると新たな発見がある。
私は時間を忘れるぐらいに調べ物に没頭した。こちらは知識を仕入れるのに夢中で、あちらは物語の世界を旅するのに夢中だった。
帰り際には、娘が選んだ絵本を何冊か借りて帰る。家に着いてからも、妻に読んでもらう娘の楽しそうな声が聞こえてくる。
図書館で借りてきた本は返却日が来れば返さなければならないが、あの日、家族三人で過ごした時間は、今も私の心の本棚に大切に並んでいる。
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