(なみだ)



黄昏(たそがれ)の窓辺に(たたず)み見上げれば 
物憂(ものう)い冬の鈍色(にびいろ)の空
(はる)彼方(かなた)に孤独な白い雲
そこに(なみだ)を浮かべた君がいる

仕事(しごと)にかまけて幼い君を
(かま)ってやれなかったあの時は
一緒(いっしょ)に遊んで欲しかっただろうに
(さび)しい思いをさせて申し訳ない

(うれ)しい時、悲しい時、(くや)しい時、
(さび)しい時、そして感動した時、
色々な(なみだ)があるけれど
あの時に(さび)しい思いをさせた
君の(なみだ)は 今でも心に残る


朝露(あさつゆ)で地面はしっとり濡れている
冬木(ふゆぎ)の枝に銀色の(しずく)
寒い川辺(かわべ)のベンチにただ一人
(ほお)(なみだ)を流した君がいた

世を(わた)るために悩んでた君
(むね)を痛めていた、あの時は
(はなし)を聞いて欲しかっただろうに
(せつ)ない思いをさせて申し訳ない

(うれ)しい時、悲しい時、(くや)しい時、
(さび)しい時、そして感動した時、
色々な(なみだ)があるけれど
あの時に(せつ)ない思いをさせた
君の(なみだ)は 今でも心に()みる

(あで)やかな桜の花が散るように
生命(いのち)もいつか終える日が来る
()かっていても受け入れられない
我より先に旅立つ愛娘(まなむすめ)

病床(びょうしょう)の君の手を握りしめ
もっと(せっ)していればよかったと
いくら(おも)ってももう帰ってこない
(まも)ってやることが出来ず申し訳ない

(うれ)しい時、悲しい時、(くや)しい時、
(さび)しい時、そして感動した時、
色々な(なみだ)があるけれど
死に(ぎわ)にポツリと目から(こぼ)れた
最期(さいご)(なみだ) 一番心が痛む

※物憂い=なんとなく心が晴れ晴れしない。
※にびいろ=濃いねずみ色。
※世を渡る=世の中で暮らしていく。








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