線香花火
夏の情緒に 誘われて
駄菓子屋で買った 線香花火
近くの公園で ひっそりと
君を偲んで 火をつけた
チロチロ小さな 細い火に
ポッツリ大きな 丸い玉
牡丹、松葉に 柳、散り菊
可憐にうつろう 神秘の火
君の匂いが よみがえり
過ぎ去りし日に ひたる小夜

ゆかた姿の 幼い娘(コ)
楽しく元気に はしゃいでた
パチパチはじけて 火が踊り
チカチカ煌めく 君の眼が
牡丹、松葉に 柳、散り菊
可憐にうつろう 神秘の火
激しくそして 美しく
まばゆい君の 面影よ

風に吹かれて 逆らわず
自然にまかせて 生きてきた
ジリジリ切なく 音を立て
光の糸が しな垂れる
牡丹、松葉に 柳に散り菊
可憐にうつろう 神秘の火
君のいとしさ 身にしみて 
儚く揺れる 胸の内

まだまだ若い 25の夏 
線香花火みたいに 散りし君
妖しい煙が 漂って
しゃがんで寄り添い 魅入ってた 
チリチリ光に 浮かんでは
ポツンと闇に 消えた顔
牡丹、松葉に 柳に散り菊
可憐にうつろう 神秘の火
君との思い出 嬉しくも
ほろ苦い夏 夜も更ける

一句:闇の中 線香花火の 華が咲き
※線香花火は「牡丹」「松葉」「柳」「散り菊」と第4段階に変化する。
「牡丹」はチロチロと小さな火花だ咲き同時に丸い火の玉が出来る。
「松葉」はパチパチと威勢良く華やかな火花が飛び散る。
「柳」は柳の葉の様な火花がジリジリと静かに流れ散る。
「散り菊」火花がチリチリと繰り返してからポツンと玉が落ちる。