hitomi's poetry
想い出綴り−24 手
cici

4年前の7月、私は白く美しい手を握りしめていた。
夏だというのに、血の気がひいて冷たい手だった。
娘は病院の白いベッドの中で、静かに眠っていた。
君の細い腕に刺さった注射の針がなんとも痛ましい。
私は温かくしようと、何度も何度も手をさすった。
闘病の君、早く良くなれと祈りながら手を握った。
その器用そうな、しなやかな細い指は握り返す事はなかった。

君の手を握り締めながら想い起こしたのは幼い頃の日々。
生まれたてのもみじの様な手は、まるでお人形さん。
ふっくらと柔らかく、とても可愛くてたまらなかった。
やがて歩く様になり、手をつないで近くの公園を散歩。
保育園も手をつないで歌を口ずさみながら通園したね。
君は私の手をぎゅっと握り締めていた。ジーンときたよ。
あの時のちっちゃな手の心地よい温もりに小さな幸せを感じた。
いつまでも手をつないで、一緒に歩いていこうと思った。

でも、いつしか君も大人になり手をつなぐ事はなくなった。
私はちょっぴり淋しいけど、君の独り立ちを喜んだ。
大人になった君の手は、料理を作ったり仕事をしている手だ。
25歳、平穏無事かと思われていた矢先、突然の不幸な出来事。
君は病床の身。私は毎日、手を差し伸べ君の手をつつんだ。
十本の指、一本一本、手にとっては優しく温かく撫でた。
しかし、看病の甲斐もなく34日間の闘病の末、息を引き取った。
私は娘の手を頬ずりし、手の平に接吻し、別れを告げた。
つないだその手は私から空しくはかなく離れた。
もう二度と君の手を握る事が出来なくなった。

寒くなり手をさすっていると、娘を助ける事が出来なかった自分の手がうらめしく思えてきた。

一句:愛し娘(いとしご)の 手の思い出は はかなくて












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想い出綴り−25 初詣

初詣…、私は年を老いたので今はお参りに行く事がなくなったが、瞳が小さい頃は毎年親子3人で初詣に行った。
最初の頃はずっとメジャーな住吉大社に参っていたが、あまりの人ごみに本殿に辿り着くのに苦労したものだった。
初詣の中で心に残っているのは、瞳が小2ぐらいの時に自宅からさほど遠くないローカルでこぢんまりとした神社へ行った思い出だ。
お天気はお正月に相応しく快晴で気分は爽快だった。神社の参拝者はまばらで、ペットを連れた人もいた。
動物好きの瞳はそのヨークシャーテリアに近づいて戯れた。うれしそうにはしゃいでいた笑顔が目に浮かぶ。
そしてその年の運勢を占うためにおみくじを買った。3人とも大吉だった。
「ほんまかいな、みんな大吉と違うか」と一瞬疑ったが、そこはお正月、素直な気持ちになって「きっと今年はええ事があるで」と言いながら3人でおみくじを木に結んだ。
その年はいい事があったかどうかは憶えていないが、それまでと違ってなんとも悠然とした初詣だった。



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