hitomi's poetry

想い出綴り−32 ラストシーン
cici
 先日の1月17日早朝、テレビで阪神大震災の黙祷のシーンが放映された少し後に
姉が亡くなった。
 姉の葬儀は2日後に執り行われたが、彼女の人生のラストシーンを刻む最後の
ご対面の時、棺へ生花を入れながら私はふと瞳の死顔を思い出した。
 瞳の頬は死化粧でうっすらさくら色、口紅は心なしか薄かった。妻は涙ぐみながら
口紅を自分の小指につけ、それを瞳の唇に改めて紅をさした。
 最愛の瞳を花嫁として送り出す事が出来なかった無念さは残るが、口元の紅色が
鮮やかに映えて白無垢に身を包んだ花嫁のようで、神々しいほどに美しいとチラッと
思った。
 そして瞳の名前を呼びながら泣き崩れた妻は、すっかりやつれ果てて血の気もなく
真っ白な顔だった。
 私は顔の周りに花を飾り、瞳の好きだった音楽CDを胸元に添え、別れを惜しみ
ながら冷たくなった頬や額を優しく撫でた。
 お見送りの人達が瞳の遺体の周りに花を入れ手を合わせてすすり泣いている。
私は拳を握りしめ溢れ出そうな涙をこらえて立ちつくした。
 いっぱいの綺麗な花に囲まれた安らかな瞳の寝顔はあの時が見納めだが、今も
鮮明に目に焼き付いている。
 私は姉の最後を見送りながら、「天国で寂しくしている瞳を可愛がって下さい」と
合掌した。
 瞳が去ってから6年半、時々あの時のラスト・シーンが蘇る。

 一句:いつまでも 心に残る ラストシーン
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想い出綴り−33 詩の扉 
cici

 私は詩心など全くない普通のおっさんでした。
 7年前に瞳が亡くなり、本棚を片付けていた時に一冊の本を見つけた。
 “きむ”という若者が書いた『想い描く世界に』という詩集である。
 その本を開くと写真と共に、それに関連する大きな文字の詩が添えれらていた。
 内容は彼が心で感じたつぶやきを書いたり、人生の応援歌を綴っている。
 ありのままの文章に着飾ったところが無く、却ってそれが私の心に響いた。
 「詩を書くのに難しく構える事は無い、自分の思っている事を素直にさらけ出せばいい」
 この詩集を読んでそう感じた私は、瞳との思い出を詩や文章に書き留めておこうと思い立った。
 それから7年間の毎月2回、思い出を辿って180編ほどの詩やエッセーを書いた。
 それだけ書くと、題材に困る事がある。
 そんな時、この詩集を手に取りパラパラと読み返すと、原点に戻り自ずとアイデアが湧いてくる。
 私に詩の扉を開いてくれた一冊が、今ここにある。

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想い出綴り−34 月 
cici

 9月12日は一年で一番お月さんが美しいといわれている「中秋の名月」。
 中秋の名月の日が必ずしも満月になるわけではないが、今年はちょうど満月だった。
 瞳が幼い頃、自宅のベランダで虫の声に耳を傾けながら十五夜お月さんを眺めて団子を食べた。
 あの時は「お月さんにウサギが居てて、お餅をついてるんやで」という私の言葉を信じていた。
 そして小学5年頃の夏休みに行った、六甲山の天文台の望遠鏡で見た月は「とても大きくて綺麗や」と感激した。
 決して手の届かない、遠く離れた月の表面やクレーターを間近に見て、宇宙の神秘を感じたことだろう。
 瞳がいなくなってからお月さんをあまり見ることが無くなったが、中秋の名月ということで夜空を見上げた。
 天国の瞳も遠い昔を思い出しながら、私と同じ月を見て同じ様に「綺麗や」と感激しているのかと思うと胸が熱くなってきた。
 愛する娘に先立たれるのはとても辛いことだが、お互いに離れていても心はずっと繋がっている喜びを微かに感じた。





















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