hitomi's poetry
想い出(つづ)り−3 阪神大震災、10年目の私
(cici)
3階の寝室のベッドの上で新聞を読んでいると、ドンドンと大きく体を揺すられた。
「一体、何事や!!」思わず発した。横で寝ていた妻は驚いて私にすがりつく。
室内灯がゆらゆら大きくスイング。今にも飛んできそうだ。棚の中の本がガタガタ踊っている。
棚の上の紙箱が放り投げれるように落ちてきた。
「あんた、大変や、地震や」「うん!とにかく下へ行こう」妻の手をとり2階の居間へ。
「とりあえずここに居ときや、ちょっと外の様子を見てくるワ」
まだ大きな揺れが止まぬ中、壁を伝ってフラフラと千鳥足で外へ出た。
表は真っ暗で、誰も出てくる気配がない。不気味に静まり返っていた。
怪訝(けげん)に思いながら妻の元へ戻り、外の様子を報告。
「こんな大きな地震やのに、みんな寝入ってしまって気がつかないのかな」と不思議がる。
(翌日、一人住まいの隣人の女性に聞いたのだが、押入れに入って避難していたらしい)

まだまだ大きな余震は続く。テレビを点けると、地震情報が…。神戸、淡路では大変な事態が
起こっている。徐々に新しく流される画面に驚きと恐ろしさを覚えた。
娘は泉大津の友人のところへ行ってたので、安否が気懸(きが)かりだったが、幸いこちら方面は
大きな被害もなく、娘も無事帰ってきた。ひとまず安心したが、ニュースの方は惨憺(さんたん)たる
状況だ。寸断した高速道路、崩れ落ちた建物、瓦礫(がれき)の山、燃えさかる街、路頭に迷う人々…。
まるで地獄絵を見ているようだった。その後も地震の被害状況が続々と伝えられ、6千人以上の犠牲者が…。

この地震列島に住む限り、明日は我が身かも…。それ以来、私達は「対岸の火事」と軽く見ていた
地震に対する反応が敏感になり、非常時に備え、様々な情報を仕入れるようになった。 
毎年マスメディアでは、甚大(じんだい)な被害に遭いながらも、強靱(きょうじん)に生き抜く被災者の
人間ドラマを数多く伝えた。徐々に復興から立ち直る人々。被害に遭っていない私達が励まされました。
一方では孤独死も大きな問題になりました。「生きる」尊さを痛感させられました。
 
あれから9年過ぎた昨年、日本列島は度重なる大型台風の上陸、大雨災害、新潟地震と、近年にない
自然災害が重複し多大な被害を被(こうむ)りました。海外でもインド洋の大地震と津波で過去最大の
被災者を出し、最悪の年になりましたが、個人的にも大変な年となりました。
私が保証人になっている知人の事業が倒産。私の店(飲食店)は不況と飲酒運転罰則強化の煽(あお)りを
受けて顧客は減る一方、赤字続きで過去最低の売り上げで、存続の危機に立たされている。
 その上、1ヶ月以上の手厚い看病及ばず、8月に25才の愛娘(まなむすめ)を肺不全で亡くした。
私にとって、人生、最悪の年となりました。暗黒の日々を暮らす羽目になりました。

阪神大震災後、10年経った今、被災者は多くの人が立ち直られました。私達も落ち込んで
ばかりいられません。彼等から不屈の精神を学び、一からやり直そうと考えました。
まず、仕事は知恵を絞って他店にない特徴のある店作りをしようと思っています。
娘には「生きる事の大切さ」を教わりました。娘の魂がこの世と縁が切れないように、
娘のホームページ作りを生き甲斐とし、娘の友人・知人にメッセージを発し続けます。
また、今まで文学とは縁がなかった私ですが、娘のメッセージを綴ることで芽生えた詩心を伸ばし、
娘の思い出の糸を辿(たど)りながら詩を書き続けます。また、今年はそれに曲をつけるため、
作曲の勉強をし、音楽を通じで皆さんと瞳のコミュニケーションを図りたいと思っています。
ずっと、ずっと縁が切れないように…
















想い(つづ)り−4 ふるさとへの道 
(cici)
眠れない日が続くと、マイナス思考が脳を支配し、気持ちが暗くなる。
落ち込みが続くと、今度は何もしたくなくなる。考える事さえ拒絶する。
一滴(ひとしずく)もない、飲み干したグラスみたいに、
心の中が空になる。そんな時、生まれ故郷へ車を走らせる。 
マンションを出て西へ数分の大通り、左に曲がり大和川を渡る。
川上の遠くにそびえる生駒の山に、父の寛さ、母の優しさを感じる。
左に広がる杜(もり)の緑が途切れるところまで一気に駆け抜け、交差点で右折する。
子供の頃、父母とよく来た大泉緑地での思い出に浸りながら、ハンドル握る。
中環を住吉橋まで一直線。しばらくぶりの便りを運んで、アクセルを踏む。
3年間、通いなれた同じ道だけど、いつも気分は違ってた。
異国情緒を漂わせるフェニックスの並木道に入って数分
いよいよ最終コーナー、橋のたもとでウインカーを右に点滅。
すぐそこに父母の待つ家がある。お父さん、お母さん、元気でいるかな? 
顔を思い浮かべながら、対向車が通り過ぎるのを待つ。
実家の横には、由緒ある内川(うちかわ)が流れ、川沿いは美しい遊歩道。
春には桜の木とヤマブキが、薄いピンクと鮮やかな黄の花色の競演。
5月になると、赤いツツジが整然と群生し、両岸を華やかに飾ざる。
冬の初めにサザンカが、冬の終わりにはヤブツバキが、きれいな花を開く。
いつものように、一面の花と川面を見渡して、心を安らげる。
フッと一息ついてドアノブを引く。二階の居間では両親が笑顔で迎える。
食事は?体の調子は?寂しくない?私に気遣う父と母。  
友達の話に暮らしぶり、仕事の話や彼氏の話、あれこれと会話して時を過ごす。
いつも同じ繰り返しのアドバイス、疎(うと)ましいけど…何故か心満たされる。

※中環(ちゅうかん)=中央環状道路





















想い出(つづ)り−5 さよならラシーン
(cici)
思い出にと あれから乗っていた hitomiのラシーン
やはり女の子の車 おしゃれなアクセサリー 目にはいる 
でも、少し散らかっている まだ子供っぽさも 残っていた 
エアコンの吹き出し口に取り付けた 甘い香りの芳香剤
悲しみくれる私を優しく包み なぜか和ませ心癒す
hitomiの部屋にもあったこの匂い 君を思い出す 
シガーライターのソケットに差し込まれた スポットライトを点け
グローブボックスの中にあった 地図を広げて見る
友達と迷いながらも遠出したと聞いた いろんなところへ行ったんだ
カーステレオのスイッチをON 流れるテクノポップス オヤジには分からない 
ダッシュボードの上のサングラス かけてルームミラー覗く オヤジには似合わない 
病院通いの時 タバコ片手に 運転していたのを思い出す
病院の帰り道 スーパーで二人 買い物したのを思い出す
握り心地のよい ウッドハンドルの感触 フレグランスの香り 
ドアのきしむ音 あちこちへのドライブ 様々な思い出 詰まったラシーン
四ヶ月間 足代わりに乗り回したが 手放すことにした
クルマ屋が乗り走り去る hitomiの面影 また一つ消えてゆく



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