hitomi's poetry
想い出綴り−39 川の字
cici
 瞳が幼い頃はいつも妻と私の間に瞳を挟んで川の字になって寝た。
 寝がえりをうって小さな手が私の腕に、小さな足が私の胸に寄りかかる。とても愛おしく思った。
 逆に私が寝がえりをうって瞳に覆いかぶさらないか気を使って寝たので寝不足の日が続いた。
 それでも可愛い寝息となんとも言えない幼子の匂いが幸せに感じ、寝不足の疲れは全く感じなかった。
 布団に川の字を描く時は、子どもにとっても親にとっても愛情の通い合う時間だった。
 お手々つないでの買い物も公園の散歩もいつも川の字、時々瞳はぶら下がってはしゃいだ。
 夕焼けの帰り道、地面にも、愛に満ちた川の字が描かれていた。
 ある日、知り合いのうどん屋さんのカウンターに座って3人でうどんを食べていた。
 すると後ろのテーブル席から「川の字が微笑ましいね」と年配の女性に声をかけられた事があった。
 川の字は私たち親子三人のほのぼのとした平和のシンボルだった。

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想い出綴り−38 ボジョレーヌーボー
cici
 もみじ狩りの季節の訪れと共にボジョレーヌーボーの解禁日がやってきた。今年は11月15日だとか。
 ワイン好きにはたまらない一日だろうが、私はビール党なのでワインには関心がなかった。飲めと
言われれば飲むが、美味しいと味わって飲んだことがなかった。だから目を閉じて飲むと白も赤も分
からない。白黒つけられない。
 だが、9年前のある日、娘が「お父さん、一緒に飲も」と1本のワインを買ってきた。
 「なんや、ワインかいな。お父さんはワインは飲めへんわ」
 「これ、ボジョレーヌーボー言うて、若い子はみんな飲んでるで」
 「へえ、これがボージョレヌーボかいな。名前は聞いたことはあるけど飲んだことないわ」
 「ボジョレーヌーボーやで。いっぺん飲んでみて」とグラスに一杯注いでくれた。
 「どう?」
 「そうやなあ、軽やかで思てたより渋みがあれへんなあ」
 その夜は娘がワインと一緒に買ってきたフライドチキンとポテトフライをアテに妻と三人でボジョレー
ヌーボーを飲み、至福のひとときを味わった。
 その翌年の8月に娘は肺を患い25歳で他界、それ以来ビール党の私はワインを飲むことは無いが、
解禁日の時期になると娘が最初で最後に奢ってくれたボジョレーヌーボーのホロ苦くもやさしい口当
たりが脳裏をかすめる。






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