hitomi's poetry
想い出(つづ)り−14 開眼法要
cici
今日は瞳のお墓の開眼・納骨式の日。約束の時間の20分前になって、お酒と昆布を買うのを思い出し慌て買いに行く。
そこで墓花も思い出し、いつもの花屋に行くが売り切れていて無かった。別の花屋へ行くが、お陰でタイム・オーバー。
大事な時にいつも慌てる悪い癖を直さなければならない。約束の時間より15分遅れで霊園のある祥雲寺に到着した。
慌てていたのと猛暑で顔面は汗ビッショリ。忘れ物が無いかチェックしてきたつもりだがハンカチが無い!ティッシュで拭いた。
日曜日なので墓参りには何組か入れ替わり立ち代わり来ていた。初めて会うのに、みんな軽く会釈をしてくれる。
墓前に海の幸、山の幸、里の幸とお酒、墓花等をお供えする。石材店の社員の助けを借り、お墓に瞳のお骨を入れた。
気を引き締めて石塔に巻いているさらしの布を巻き取っていく。徐々に石に彫られた名前が現われ実感が沸いてきた。
暑い中、開眼・納骨の供養が始まる。お住職は額に沢山の玉の汗を浮かばせ、読経をしながら清めのお米と塩を撒(マ)く。
お住職のだみ声に引き寄せられ、おごそかな気持ちに浸(ヒタ)っている時にどこからともなく「君が代」の曲が流れてきた。
幹線道路の近くなので右翼の街宣車に違いない。軍歌でなくて良かったと内心思いながら遠ざかる「君が代」に耳を傾ける。
妻が熱射病になるのではと心配する程の炎天下だったが、途中から雲行きが怪しくなり涼しい風が吹きだして汗がひいてきた。
先日から心配していたのだが、今日の天気予報は晴れのち雨。法要中に降らないでくれと天に願いながら仏もお祈りをする。
終わり掛けには雨がチラッと肌に当たる様になってきたが無事に終わった。瞳の気くばりなのかもしれないと手を合わす。
暫らくしてザーッと降ってきた。間一髪セーフだった。お住職に挨拶をしに応接室に入ると、クーラーの涼感が身に沁みた。
瞳のお墓
※7月16日に自宅近くの祥雲寺で行いました。歴史のあるお寺で大相撲・出羽の海部屋大阪場所宿舎としても有名。
※開眼法要(かいげんほうよう)=新しいお墓を供養し、魂を迎え入れる儀式。


























想い出(つづ)り−15 娘のボーイフレンド
cici
娘のボーイフレンド…
対面する時が、父親として一番複雑な気持ちになる瞬間だ。
もう、10年と少し以前のことだった。
娘が16歳の時、家に初めてボーイフレンドを連れて来た。
突然の訪問に心の準備が出来ていなかった。
戸惑いと緊張、何を話していいのか、思考回路が直ぐに反応しない。
しばらく間をおいてから「お腹が空いてないか?」
私はすでに夕食を済ませていたが、その言葉しか出てこなかった。
彼氏のほうをチラリと見ながら「うん」と娘。
それではと、近くのレストランへ連れて行った。
黒いTシャツが似合う日に焼けたスポーツマンタイプの好青年だ。
娘達がオーダーした料理が並んだテーブルを挟んで会話を始めた。
私はホット・コーヒーにフッと一息吹きかけ一口含みノドを潤す。
「年は?」「どこに住んでるの?」「趣味は?」「どこで知り合ったの?」
会話というより、彼にとっては尋問(ジンモン)みたいだったかもしれない。
それでも次から次に繰り出す私の質問に素直に答える、高三の彼。
娘は私の矢継ぎばやに浴びせる質問にやや迷惑そうな顔をしていた。
第一印象は合格。面接試験も合格だ。しかし、何か不安が胸をよぎる。
“大丈夫やろか?”
深く考えても仕方がない、二人とも若いんだから。
いろいろ経験を積んで勉強すればよい…、そう、心に言い聞かせる。
あれこれ会話をしながら、自分にもこういう時期があったのを思い出していた。



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