hitomi's poem
 hitomiの(うた) part7(回想1)


瞳の百か日法要も終わり 気持ちがようやく 落ち着いたかに思える
しかし、空白の時間(とき)は 瞳の面影が 記憶の(ふち)(よみがえ)
手のひらに抱いた 生まれたての時から 看取(みと)った時の情景まで 鮮明に浮かぶ  
目を閉じれば 闘病中の細くなった肩 折れそうな腕 昏睡(こんすい)の姿が映る
瞳の短くはかない人生を 回り灯籠(とうろう)のように 次々と過去を巡らせば
瞼の奥がうるうると 熱い涙で(あふ)れ 胸はギュッと締めつけられる 

幸せを享受(きょうじゅ)する事無く この世を去らせ 申し訳けなく思う  
仕事に明け暮れて 十分に親身(しんみ)になれなかったこと いつまでも心にひきずる

世間のこと 仕事のこと ギターを 料理を パソコンを 似顔絵を 手品を 
私の知ってるすべてを教えたかったのに ひとつも知る事無く()ってしまった

一緒に仕事をしたかったのに 一緒に甲子園へ行きたかったのに 気づくのが遅かった
()り残したこと多く 悲嘆(ひたん)にくれるばかりで やりきれない思いになる   

街で同じ世代の()をみかけると 瞳だったらと ふっと頭をよぎる
おしゃれに着飾った 亜麻色(あまいろ)の髪の 若い女性(ひと)をうらやましく思う

生きていたら もっと楽しいこと うれしいこと 経験できたのに

生きていたら きっといい人と めぐり会えたのに 惜しいことしたと悔いる
花嫁姿を見ることも 孫を抱くことも 二世帯住宅の目標も途絶(とだ)

今はあてもなくさすらう 放浪者のように 人生をさまよい歩く

※享受(きょうじゅ)
そのものの持つよさを味わったり 受け入れたり して、自分の精神生活を豊かにする事。



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