hitomi's poetry
想い出綴り−29 プラット
cici

 自宅の近くには南海の堺駅と直結した商業施設として10年ほど前にオープンしたショッピング・センターの

プラットプラットがある。ここは賑やかしいカラフルな外観に開放的な自由街路など個性的なショッピング・セ

ンターで、スーパー、ミドリ電化、TSUTAYA、衣料品店、雑貨店、飲食店、その他色々な店が並んでいる。

 6年ほど前、瞳は大阪市内に住んでいて我が家に帰ってきた時は、そのセンター内のスーパーに瞳のお気

に入りの健康食品があったので何度か買い物に付き合った事がある。

 「ついでに何でも欲しいモン買いや」と食材や必需品も買ってやり、帰りには同じセンター内にあるケンタッ

キーで瞳の好物のフライド・チキンを買うのがお決まりのコース。それまではあまり父親らしい事をしてやれな

かったので、この時ばかりは少し“子煩悩な父親”の気分に浸った。

 私は普段は向かいのイトーヨーカドーで買い物をするのだが、今日はプラットプラットにプラット立ち寄った。

 そして瞳と一緒に買い物をした当時の事を思い出して昔を懐かしんだ。










































想い出綴り−28 偲ぶ種(しのぶぐさ)
cici

 11月下旬の去りゆく秋に義母が他界した。
 葬儀に参席した私の心の中に、僧侶の懇ろ(ねんごろ)な読経と清冽(せいれつ)(かね)の音のハーモニーが
朗々(ろうろう)と響き渡った。
 供花(きょうか)に囲まれた祭壇、穏やかな微笑みを(たた)えた遺影、ピンクの布に包まれた
棺などを何気(なにげ)に視線を向けていると、娘の瞳の葬儀を思い出した。

 その昔、葬儀中に死者が生き返った話を聞いたことがあったので、あの時は僧侶
の読経中ずっと、瞳が棺の(ふた)を開けて生き返ってほしいと念じた。

 葬儀のお勤めが終わり最後の対面の時、天使のように美しくそして雪のように冷た

くなった瞳の顔を指先で撫でたり見つめては、息を吹き返して欲しいと念じた。

 火葬場に着いてからもずっと生き返ってほしいと念じたが、火葬炉の扉が閉じた瞬間
「もうこれでお終いや」と号泣とともに観念した。何度も何度も瞳の蘇生(そせい)を念じたが奇跡

は起こらなかった。

 義母の葬儀が終わり帰宅してから、妻と義母の思い出話とともに、在りし日の瞳の思

い出話をした。何時間も…
 冥土(めいど)では瞳が先輩ですが、お義母さんは人生の大先輩です。もしあの世で

瞳に遇ったらをよろしくお願い致します。

 一句:偲ぶ種 故人の思い出 尽きぬ話(ネタ)
 ※偲ぶ種=昔を懐かしむ種(タネ)。思い出の手がかり。
 ※懇ろ=心がこもっているさま。



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